就業規則について
就業規則
【就業規則の役割】
就業規則とは会社のルールを定めたもので、会社と労働者の権利義務を確認し、会社の秩序を守り、起こり得るリスクを回避するものです。規則に規定されていないものは法律に定めがあるものを除き行使できません。
<役割(策定のメリット)>
1 労働条件や働くルール、そして会社・社員双方の行動基準を見える化し、不公平感をなくし従業員の安心感につながります。
2 社員の問題行動が発生して注意指導や懲戒処分を実施しなければならない場合、就業規則によって根拠をもった対応が可能になり、会社のリスク軽減にもつながります。
3 経営理念や経営目標を達成するための行動基準を示すことにより全体のパフォ-マンスをあげることができます。
【就業規則の制約】
就業規則は会社で決めることができますが制約もあります。
優先順位は、 法律>労働協約(注1)>就業規則>労働契約となり
就業規則は法律や労働協約に反する規定は無効となり、就業規則に反する労働契約は無効となります。逆に法律や就業規則よりも有利な個別労働解約を結ぶことは問題ありません。
(注1)労働協約とは労働組合と会社結んだ決めごとで強い効力をもちます。労働組合がある場合に締結した労働組合員のみに適用されますが、その労働組合員が社員の4分3以上を占めている場合は他の非組合員にも適用されます。
【絶対的必要記載事項と相対的記載事項】
どの会社も必ず記載しなければならない<絶対的必要記載事項>と会社に規定がある場合に定めなければならない<相対的記載事項>があります。絶対的記載事項は記載がないと就業規則の不備となり、労働基準法違反として是正勧告や罰則を受けることもあります。
<絶対的記載事項> 必須規定
・労働時間や休憩に関する事項
始業時刻・終業時刻や、1日当り・1週間当たりの所定労働時間を記載します。
パートなど短時間勤務の人がいる場合やシフト制を導入している場合は、想定されるすべてのパターンの明記が必要です。多くの勤務形態がある場合は労働時間の代表的なパターンを例示した上で、具体的な勤務日時をシフト表等で定める方式も許容されています。
・休日や休暇に関する事項
休日の日数や与え方、年次有給休暇や会社独自の休暇の付与方法や取得ルールを記載します。できる限り具体的に明記しておくことが望ましいです。
育児休業や介護休業などについての記載も必要です。法改正が多いので別規定で定めるのも一案です。
・賃金に関する事項
基本給や各種手当・通勤交通費といった、月毎・週毎・日毎に支払う賃金の種類や決め方を記載、賃金の締め日・支払日や昇給・降給に関する定めも必要です。就業規則本則では概要を記載し、詳細を給与規程などで定めるのも一案です。
・退職に関する事項
定年や契約期間の満了など、退職の理由となり得る事項を記載します。労務トラブルを未然に防ぐため、後述する懲戒規定と合わせて解雇の理由や手続き方法を決しっかり記載しておきましょう。
退職の申出期限も記載事項の一つですが、あまりにも長すぎると社会通念とかけ離れていると判断され得るため、長くても3ヶ月以内にとどめておくのが無難です。
なお、退職の申出期限を定めた場合でも、民法第627条を根拠に申し出の2週間後の退職を求められる可能性がある点にも留意しておきましょう。
<相対的必要記載事項> 会社に規定がある場合に記載
・退職金に関する事項
退職金の支給対象になる社員の範囲や金額の決め方、支払方法を記載します。
・賞与等の臨時の賃金や最低賃金額に関する事項
賞与や寒冷地手当・決算手当など1ヶ月を超える期間ごとに計算する賃金を支払う場合は、計算基準や支払方法を記載します。最低賃金額の定めは、日給や歩合給で働く人に対して、業務の有無や成果にかかわらず一定の賃金を支払うことをいいます。
・社員に負担させる費用に関する事項
給食代や駐車料金など、社員の自己負担になる費用の内訳や金額を記載します。従業員にテレワークをさせる場合は、自宅での通信費・光熱費を負担についても明確にしておきましょう。
・安全衛生に関する事項
職場の整理整頓や保安規定などを記載します。定期健康診断やストレスチェックに関する内容や、感染症などにより就業を禁止する条件についても定めておきましょう。
・災害補償や業務外の傷病扶助に関する事項
労災保険や傷病手当金に上乗せして社員に補償を行う場合は、補償の基準や金額の記載が必要です。
・表彰や制裁に関する事項
長期勤続や優れた業績を収めた社員を表彰する際や社員に懲戒処分を下す際の基準を記載します。ハラスメント禁止規定を設ける場合は、加害者に対して予定している措置についても明記が必要です。
・その他の事項
福利厚生や人事異動・出向など、すべての労働者に適用される事項を記載します。休職や人事評価に関するルールを定めている場合も、就業規則への記載が必須です。
<任意での記載事項>
就業規則には、会社のビジョンや規則を定める趣旨などすべての社員に周知徹底したい内容を記載しても構わないとされています。服務規律やクレドなど、社員の行動の考え方を積極的に記載する企業も増えてきました。
【就業規則の3つの義務】
<届け出の義務>
常時10人以上の労働者を雇用する事業所は、事業所ごとに管轄の労働基準監督署に届け出をしなければなりません。各事業所とも内容が一緒であれば一括申請も可能です。
<従業員の過半数代表の意見を聞く>
従業員の過半数代表(注2)の意見を聞き、過半数代業の意見書を添えて労基署へ提出します。意見書に反対の記載があっても就業規則自体は受理されますが、従業員には丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。意見がない場合は「意見なし」の記載でもかまいません。
(注2) 従業員代表は従業員の中から選挙等で選ばれなければなりません。会社が指名した従業員や管理監督者の地位にある者はなれません。
<全社員に周知の義務>
労基署に届け出をしたとしても、従業員に周知されていなければ効力が生じません。
すべての社員に書面での配布までは必要ありませんが、常に全社員が閲覧できるよう
書面の備付やイントラネット等への掲示等が必要とされます。
労基署に届出をしたとして従業員にも周知されていなければ無効とされてしまいます。
【就業規則の作成の流れ】
就業規則を作成するには、従業員の意見を聞きながら社内ルールの現状や労務管理の課題を洗い出し、実態にあったものを作成しましょう。既存の就業規則を改定する場合にも課題を洗い出し、法改正への対応だけでなく、会社の現状にあった規定に改めていきましょう。
<1.労働条件や労務管理の課題を洗い出す>
就業規則の原案を作成する前に、現状の労働条件や労務管理の課題を洗い出して就業規則に盛り込む内容をまとめます。過去の労働慣習や諸手当なども確認していきましょう。
<2.就業規則の原案を作る>
就業規則に盛り込む内容がまとまったら、原案を作成します。先述した絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項を網羅しているかどうかのチェックも欠かせません。
労働組合のある会社の場合は、労働協約との整合性のチェックも必要です。労働基準法や育児・介護休業法などの法令と整合性を取るため、最新の法改正情報も収集しておきましょう。
一度設定した条件を労働者の不利益に変更・廃止するのは非常に難しいため、将来も見据えて策定していきましょう。
<3.従業員代表の意見を聞く>
就業規則の原案ができあがったら、事業場ごとに従業員の過半数代表の意見を聞いて意見書を作成します。すべての意見を就業規則に反映させる義務はありませんが、意見を取り入れなかった理由については丁寧に説明しておく必要があるでしょう。
<4.労働基準監督署に届け出る>
従業員代表の意見を踏まえて就業規則の原案を調整した後は、事業場を管轄する労働基準監督署に就業規則の届出を行います。就業規則と従業員代表の意見書を2部提出します。
近年は、就業規則の中に服務規律や会社のビジョンを明記して、組織と個人両方のパフォーマンスを高めようと考える会社も増えています。就業規則作成・改訂を期に経営理念・経営方針を明確化しておくことも重要です。従業員のモチベーションを高め、トラブル発生のリスクを抑えていける規定を作成していきましょう。
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